2010年2月13日土曜日

冬オリンピックがカナダにやってきた

暦の上では、寅年が今日から始まった。旧暦のお正月であり、今日をもって春の始まりを祝い、幸多い新しい一年を慶ぶ。一方では、ちょうど同じ日に、冬オリンピックがカナダで始まった。中国にいる人々は、大晦日の昼にオリンピックの開会式を鑑賞し、同じ日の夜に待ちに待った、一年を締めくくるテレビのショーを楽しむという、いたって得がたい経験をすることになる。

カナダということで、オリンピックの開会式をしみじみと見入った。数万人の現場の観客、テレビの前に座るおそらく億で数える世界の人々のために、言葉通りの豪華絢爛なステージが用意された。冬オリンピック史上はじめての室内開会式と謳い上げることで、室外の要素をふんだんに盛り込んで、素晴らしい演出が繰り広げられた。花火、五輪から飛び出したスノーボード、巨大な聖火台、さすがにあっと感じさせるような瞬間が数多くあった。印象に残ったのは、やはり変幻自在のスクリーンだった。鮮やかな光に照らされて、横のそれは空や雲となり、縦のそれは木になり、氷山となる。吊り上げられ、下ろされ、散り落ちて、スタジアムの空間がまさに生きたようなものとなった。それを飾りつけるかのように、人間は上を見上げ、頂上から飛び降り、あるいはそのまわりを見えない翼を羽ばたいて飛び交う。

画面を見つめていて、柔らかい布がこうにも豊かな表情を見せてくれるものかと、何回となく心を打たれた。いうまでもなく計算しつくされた視覚の効果だった。光、色、それは人間の目を喜ばせ、だれもが持ち合わせている常識や知識と相まって、想像の世界を組み立てていくものだった。ちなみに、そのような巧妙なスクリーンの演出でも、建物や柱などに変身することがなかった。自然を一番に自慢にしているカナダならではの発想がそこにも隠されていたのではないかと勝手に想像した。

カナダらしいといえば、開会式の最後の最後になってだれもが予想できなかったハプニングが起こった。これまで最高の秘密とかなんとかもったいぶっていた聖火の点火には、なんとクレーンが上がらなかった。市の中心部にすでにおなじ格好の聖火台が立てられているから、いっそうバツが悪い。ただ、こんな失敗でも、みんなはのんきに笑って済ましてしまう。そういうところに、いや、むしろそういうところにこそ、カナダの人々の能天気な性格が一番はっきりと覗けた気がしてならない。

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