2016年9月24日土曜日

図書館カタログ検索

いまや大学図書館では所蔵資料のデジタル化や全点公開が驚くスピードで進められている。今週になって個人的にあらたに気づいたのは、筑波大学図書館での公開である。所蔵の貴重書など約一万点のものを、すべて図書館検索システムに統合して、検索画面から資料をそのままブラウザの上で閲覧できるようになっていて、きれいな高精細の画像と軽快な閲覧環境が提供されていて、なかなか読み応えがある。

検索のシステムは、耳新しいもので、なによりもその名称は「Tulips Search」とあって、日本語にさえなっていない。システム開発や応用、そしてなによりも他の大学や研究機関への広がりなど、関心あることは数多くある。それはさておくとして、まずは短く検索を触っての、ささやかな苦労とやりくりをここに記しておきたい。目的は、オンライン公開をしている資料群の全容を眺めてみたい、というものだ。そこで、そのトータルのリストを出してもらおうとしたら、なかなか簡単には実現できなかった。繰り返しの試行錯誤のすえ、ようやくつぎの二つの方法にたどり着いた。「Tulips Search」の隣に位置する「OPAC検索」の画面から、「資料タイプ」として「貴重」を選ぶ(6611件ヒット)、あるいは、公開資料の図書館記録に記された「OPAC上で画像が見られます」という記述を、そっくりそのまま「Tulips Search」の検索欄に貼り付ける(9806件ヒット)。ここからさらに絞って検索を試したら、それまた不可解な結果が残る。一例として「草紙」と追加の条件を入れれば、「さうし」、「艸帋」、「雙紙」がヒットするが、「草子」は含まれていない。

「Tulips Search」の導入は、カレントアウェアネス・ポータルによれば、すでに二年半もまえのことである。ただ現在の古典籍公開の規模に達したのはいつごろだったのか、すぐには分からない。思ったほど大きな告知や、話題を攫ったほどの注目がなかったのではないかと勝手に想像してしまう。もともともしそうだったとすれば、デジタル資料がいつの間にかわれわれの日常に変わったという事実を物語るものとして、素直に嬉しい。

Tulips Search

2016年9月17日土曜日

ポンチとポン地

漫画の歴史を語るうえでは、「日ポン地」の存在を避けては通れない。ただ、貴重な出版物のわりには、その全容、そしてその具体的な作風やアプローチなどがいまだ深くベールに隠されたままだ。

タイトルの意味は、あくまでも「ニッポン」と掛けた「日本のポンチ(絵)」といったところだろう。ここに、まずは「ポンチ」という言葉の生まれつきに謎が多い。いうまでもなく横浜で発刊されたあの「The Japan Punch」の系譜を受け継いだものだろうけど、しかしながら、それがローマ字表記に直されるにあたり、「パンチ」でもなければ、「プンチ」でもなくて、「ポンチ」に落ち着いだのは、どのような経緯、あるいは発音の訛が裏で作用していたのだろうか。同時代の国木田独歩による「上等ポンチ」、風刺漫画に実際に見られる「ポンチ絵」などの用例からにして、「ポンチ(絵)」という言葉への認知は、広く確認できるのだ。一方では、「風俗画報」の臨時増刊として刊行された「日ポン地」における「地」の意味についての詮索もあるようだが、おそらく特別に深意があるわけではなく、最初の「日」という文字に対応して仮名ではなくて漢字をもってきたというレイアウト上の考慮が基本だったのだろう。いわゆる変体仮名が通行していたころのことであり、「ち」と読ませる「地」の表記は、スタンダードなものだったことを忘れてはならない。

「日ポン地」には、意外と簡単にアクセスできない。国会図書館でデジタル化されたそれは、館内閲覧の対象にとどまり、ジャパンナレッジに収録されたそれも個人向けサービスでは閲覧できない。この現状は、一日でも早く変わってほしい。

ジャパンアーカイブズ

2016年9月10日土曜日

ネットアクセス

新学年は、二日あとにいよいよ始まる。今度は、二つのクラスとも満員で、いつものわくわく感に加えて、ちょっと覚悟して臨むようにしている。あれこれと準備を整えているのだが、とりわけ教室でのネットアクセスの方法をここにメモしておく。

クラスでは、もはや黒板を使わず、それに当たるところにスクリーンを下ろしている。講義に合わせてスクリーンに映し出すのは、画像などを多用するパワーポイントと、空白のグーグルドキュメント。後者のほうは、文字をタイプして見せる以外、学生たちに一斉にコメントや答えなどを入力させるという使い方も併用し、そのためドキュメントの共有を、リンクさえ分かれば匿名でも編集できるように設定しておく。クラウドからのアクセスを前提とするので、USBメモリーに入れてそれをパソコンに差し込むという面倒は避けられる。一方では、オンライン利用にあたり、教室のような公共の場所で毎回パスワードを入れたりするようなプロセスを努めて避けたい。その方法として、毎回の講義に使うパワーポイントのファイルのリンクをその都度空白のグーグルドキュメントに記入し、そのドキュメントは、短縮アドレスサービス(いまは「bit.ly」)を利用して呼び出す、というやり方を取っている。

以上のような流れは、ここ数年すこしずつ模索してたどり着いたものだ。去年までは、上記のリンク記入のステップは、「Linoit」を利用していた。手軽でレイアウトも見やすい。しかし、いつの間にかそのサービスは大学の構内利用から除外されたらしく、教室からだけはアクセスできなくなった。このように、環境の変化にはつねに慎重に対応せざるをえないということも、現在のネット利用の一つの側面だと覚えておきたい。

2016年9月3日土曜日

図書検索

新学年が始まろうとしている。今学期の担当は、近代文学と歴史という二科目、いずれも講義が中心の、大人数のクラスだ。文学のほうは三年ぶりに開講するもので、毎回すこしずつ違う内容を取り上げ、自分にとってけっして身近ではない小説などを読むきっかけを作ろうと心がけている。そこで、準備に取り掛かって、さっそく気付かされることがあった。

学生たちに提示する参考資料を決めようと、大学図書館のカタログを検索し、あの「ebrary」はますます充実するようになったことを実感した。大学関係者としてだけ利用できるものだが、保存なら自由に指定する枚数をPDFに変換し、オンライン閲覧の状態なら書籍にテキストファイルの形でアクセスできる。さらに驚いたのは、検索対応の内容だった。簡潔な作者の紹介を探そうと思ってカタログに作者名を入れたら、さっそく期待したものにたどり着いた。よく見てみれば、七百頁を超える書籍の中の、ただの二、三頁分量の章段のタイトルが、そのまま独立した検索項目としてヒットしたのだった。図書館カタログの対象は書名、著者名、分類といった伝統的な枠組みは、いつの間にかすっかり様変わし、図書はもはや検索の最小単位ではなくなった。

今週はじめに、digitalnagasaki氏はそのブログで国会図書館のデジタルコレクションの検索内容への細かな、あくまでも利用者の立場からの指摘を記した。図書検索の実態とユーザからの期待、そして検索システムが対応できる情報量の爆発的な増加に伴い、図書館側の対応も急速に変わり、目が離せない。

国デコの使用感