2016年9月17日土曜日

ポンチとポン地

漫画の歴史を語るうえでは、「日ポン地」の存在を避けては通れない。ただ、貴重な出版物のわりには、その全容、そしてその具体的な作風やアプローチなどがいまだ深くベールに隠されたままだ。

タイトルの意味は、あくまでも「ニッポン」と掛けた「日本のポンチ(絵)」といったところだろう。ここに、まずは「ポンチ」という言葉の生まれつきに謎が多い。いうまでもなく横浜で発刊されたあの「The Japan Punch」の系譜を受け継いだものだろうけど、しかしながら、それがローマ字表記に直されるにあたり、「パンチ」でもなければ、「プンチ」でもなくて、「ポンチ」に落ち着いだのは、どのような経緯、あるいは発音の訛が裏で作用していたのだろうか。同時代の国木田独歩による「上等ポンチ」、風刺漫画に実際に見られる「ポンチ絵」などの用例からにして、「ポンチ(絵)」という言葉への認知は、広く確認できるのだ。一方では、「風俗画報」の臨時増刊として刊行された「日ポン地」における「地」の意味についての詮索もあるようだが、おそらく特別に深意があるわけではなく、最初の「日」という文字に対応して仮名ではなくて漢字をもってきたというレイアウト上の考慮が基本だったのだろう。いわゆる変体仮名が通行していたころのことであり、「ち」と読ませる「地」の表記は、スタンダードなものだったことを忘れてはならない。

「日ポン地」には、意外と簡単にアクセスできない。国会図書館でデジタル化されたそれは、館内閲覧の対象にとどまり、ジャパンナレッジに収録されたそれも個人向けサービスでは閲覧できない。この現状は、一日でも早く変わってほしい。

ジャパンアーカイブズ

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