2011年12月5日月曜日

京都表展

知人から招待を受けて、週末に差し掛かった一日の午後、市内で開催されている小さな展覧会に出かけてきた。「表展」と名乗るもので、今年は数えて95回目、さしずめ100年に近い歴史をもつ由緒ある京都ならではの行事だ。表・展という二文字の組み合わせをはじめて知った自分にとっては、そこにきっと知らなかった世界が用意されていると予想していたのだが、それでも驚きがじつに多かった

いうまでもなく、「表展」とは書画表装の展覧会だ。しかし、その表装とは、和紙に描かれた作品を展示や保存のために加えられる最後のプロセスとだけ考えていた。しかしながら、京都での表展は、そのような認識が一つの大きな内容を見落としたことを教えてくれた。古い作品の修復である。展覧会に招待してくれた方は、かれの出品作品を丁寧に解説してくれた。修復前のものの写真を添えてもらいたかったのだが、壁に掛けられたものは、まるで作家の工房からいまさっき持ち出されたような、初々しくて、漲るような生命力をもつものだった。しかしながら、それが百年も近い昔のものを修復したものだと教わって、目を見張る思いだった。ここまで甦らせるためには、どれだけの時間を費やしたかと、恐る恐るに尋ねたら、「十日ぐらいだ」と、いとも簡単な答えが戻ってきた。いうまでもなく厳しい訓練や長年の経験を積み重ねてきた熟練な技術の持ち主ならではの成せ技だった。これを目のあたりにして、つい最近聞かされた、ある新出絵巻についての識者からの推測を思い出さざるをえなかった。ハイライトの画面が抜け、文字テキストが不自然に接続されたあの作品について、絵が切り取られたのだろうというものだった。いまなお保たれている不思議なぐらいの技を実際に見て、なぜかあの推測には納得した思いだった。

ちなみに展覧会の場所は、京都文化博物館。一階は無料で入り、しかも訪ねたときには優雅な室内コンサートが催されていた。博物館の入り口でスタッフは心地よい京都弁で場所の案内をしてくれた。こんどはまた時間を作って、何回も訪ねてみたい。

京都表装協会・第95回表展

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