2012年9月15日土曜日

漢字伝来

勤務校は新しい学年の始まりを迎え、あっという間に最初の一週間の授業が済んだ。今学期は、はじめて「文明概論」を受け持ち、概観する知識を、それこそ自分でも勉強しながら講壇に持ち込むこととなる。50名を超える若い人々の真剣な眼差しを受けて、気持ちの良い張り詰めた時間を計13週間ほど続く。

120915さっそくはじまった講義テーマの一つは、日本文明の始まりがあった。となれば、漢字伝来は避けて通れない。現存する最初の文字の姿をすこしでも実際に見せてあげようと思って調べたら、江田船山古墳出土「銀錯銘大刀」銘文がリストに上がってくる。そこで、適当な画像をどこに求めるべきだろうか。すこし前のやり方だと、写真が入っている参考書、教科書を漁り、大型の図書館でも近くにあれば、国宝全集などのアルバムを開けば、なんらかの結果が出てくることだろう。ただし、おそらくどれも高精度の画像が望めず、かつ部分の写真がほとんどだから、だれかが選んだ部分を適当にそのまま使い、全体を見通した上で自分の手で画像を取り出すことなどはとても無理なことだったろう。しかしながら、デジタル環境において、事情は一変した。所蔵が東京国立博物館だと分かれば、「e国宝」、「カラーフィルム検索」サイトにアクセスすれば、呆気にとられるぐらい簡単に全体画像が手に入った。改めてスクリーンを見つめ、感動を覚えた。

いまや常識になったものだが、デジタル情報には検索という利便性がある。ただ、一発の検索をあまり信用すればとんでもない失敗にも繋がる。この実例においても、東博サイトの内部の情報は、インターネット全体の検索では浮かんでこない。言い換えれば、さきの参考書を使うような要領がどうしても必要となり、一冊の本や一つのシリーズの代わりに、特定のデジタルリソースに目を向ける予備知識が要求される。他の人にすこしでもこの手がかりを伝えようと、さっそくウィキペディアの「江田船山古墳」項目に外部リンクを付けておいた。

ウィキペディア:江田船山古墳

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