2014年4月12日土曜日

ポンチ絵

さる火曜日、めずらしく授業外の時間においてふだんの学生たちを対象にささやかな文化の講義をした。はじめての試みとしてのレクチャー・シリーズの一環として設けられたもので、絵巻の話を持ち出した。そこで、すこしでも学生たちの日常に近づけようと、漫画への展開をテーマに据えた。音声や動画まで動員させて、何人かの好奇心を確実に惹き起こすことがあればと、願うばかりだ。

20140412話を準備している間に、「ポンチ絵」という言葉を知った。これまでの自分の語彙リストにはまったくなかったものである。調べてみれば、国語辞書には確かに収録されていて、れっきとした使用例を擁している。江戸も最末期においてイギリス人が発刊した雑誌「The Japan Punch」に由来したもので、パンチならぬポンチとなったと、一様に解説されている。雑誌の中味は、一コマ漫画なる「カトーン」。時事諷刺と社会批判などをモットとし、あの時代の雰囲気を垣間見る格好の資料として、近年は複製まで出版されている。ならば、あの「北斎漫画」にいう「漫画」と、いまごろの「マンガ」とを繋げる最高の中継点を成すものなのだ。なによりも、絵描きの手本的なスケッチではなくても、内容のあるものだから、それまでの「漫画」とは一線を劃したものだ。一方では、ポンチのままだとどうしても言葉としては収まりが悪い。普通の人々にも素直に受け入れてもらうためには、やはり在来の、しかもおそらくはそこそこしか知られていなかった漫画という名称に置き換えられることが、ささやかな運命だったかもしれない。

それにしても、一つのユニークな言葉としてのポンチ絵は、世に現われた上限が明らかだが、それははたしていつごろまで使われたのだろうか。いまごろ、発達されたデータサーチのリソースを持って、簡単に答えが得られるものだろうけど、まったく利用していない分、その様子には不案内で、すぐには手がかりが得られない。

0 件のコメント: