2017年5月13日土曜日

蛇人間

語学研修の学生たちを連れて短い東京滞在を始めた。この春は、古典画像テーマの展示はいくつも行われている。中でも企画される段階から話を聞いていた「絵巻マニア列伝」にはずっと関心を持ち続けてきた。最初の自由時間になってさっそく駆けつけ、終了前日に滑り込みの形でじっくり鑑賞することができた。

思いに残ったものはとても多い。ここに画面を見つめての記憶の一つを記しておきたい。近年、いささか話題になった「地蔵堂草紙絵巻」をはじめて目にした。ストーリとしては、竜宮での良い思い出が人間の世に戻ったら体全体が蛇になったという、奇想天外を滑稽談にするような、愉快なものだった。とりわけビジュアルに表現される蛇人間の姿に驚きを覚えた。かつて短く書き記したものだが、蛇になった人間といえば、頭が人間で体が蛇、あるいはその反対の体が人間で頭が蛇という二つのシナリオしか考えに上がらなかった(「人面蛇身」)。そんなところに、と三番目の構図が目の前にあった。いわば蛇に身を載せた人間で、二者が分かれられずに一体になったというものである。そもそも非日常的な様子を限られた画像空間に取り入れようとすれば、ここまで苦労が多い。

展示会の眼目は、いうまでもなく「マニア」という一言に尽きる。違う時代の代表格のビッグネームに焦点を絞り、貴族日記を紐解いて、読み下しと現代語訳を添えての構想は、とても魅力的だ。いっぽうでは、会場からも分かるように、普段の人々と古日記との距離は、さすがに簡単に埋められるものではない。ビジュアル資料を対象にしているだけに、ほかになにかもっと伝わるアプローチがないものかと、ついつい思いめぐらしたものだった。

絵巻マニア列伝(展示構成)

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