2017年6月4日日曜日

豚を料理

大きな美術館の常設展には、さまざまなユニークな魅力を持っている。個人的にその一つは、写真撮影可能というものだ。(「展覧会で広がる”写真撮影OK”その裏側とは」)多くの資料は、すでにデジタルの形で利用できるようになったと知っていても、やはりカメラを構えてみたくなる。自分のレンズを通したら、なぜか落ち着きを覚え、作品との距離が近くなる。週末に自由の時間に恵まれ、東博を訪ねた。

今度も、あれこれじっくりと見て回った。絵巻関連では、あの「綱絵巻」が全巻広がる形で展示されていて、人に囲まれることなく気が済むまでゆっくり見れた。国宝館には、年間の展示予定が掲げられ、あの「一遍聖絵」が九月に登場してくる予定だ。一方では、アジア館は、やはり素晴らしい。とりわけ中国の画像石の展示にはとても充実なものがあった。なかでも、料理関連の場面は、いくつも集められている。つねに関心をもつテーマであり、すっかり見入った。たとえば右に掲げる豚と、これに取り掛かる男の姿は、なんとも印象的だ。(画像石・酒宴/厨房、TJ-2030)男の右手は包丁を握り、高々と力強く振り上げられている。説明の文にあったように、料理の前段階としての、豚解体に取り掛かったところだろう。生き生きとした状況を伝えるにはシンプルな線しかないが、それが確実でいて味わい深い。画面をよくよく眺めてみれば、料理師の突き出す気味のお腹は微笑ましい。二千年前のメタボ男は、その歳と貫禄を遺憾なく今日に訴えている。

豚料理の隣に描かれたのは、天井に吊るされた魚と、酒の醸造。料理法、料理の環境、料理その行動の意味や位置付けなどもろもろの課題についてきわめて示唆が多く、語られ甲斐のあるものに違いない。ただ、誇張されたタッチで伝えられたものは、おそらく写実の対極的なところに位置するものだろう。画像が分かりやすい分、この事実を見落としたり、見逃したりすることへの警戒を忘れてはならない。

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