2020年7月18日土曜日

テクスト遺産

金曜の夕方(日本時間は土曜の午前)、早稲田大学国際日本学拠点ほか主催のオンラインワークショップ「テクスト遺産の利用と再創造」を聴講した。テクスト遺産をキーワードに、古典の継承(古今伝授)、解釈(古注釈)、書籍の形(書誌学)、所有、はては今日におけるデジタル利用など、多方面からのアプローチがなされ、いろいろな意味でよい刺激を受けた。

ここしばらくの間、読書の一つには「徒然草」の古注釈がある。新たな知識の吸収とともに、戸惑いや、ところどころ突っ込みを入れたくなるような経験は少なからずにある。たしかに中国の伝統に照らし合わせて「注疏」という知識人の作業があるが、そのような中国的な発想からすれば、一篇の文人の随筆にこれだけのエネルギーがつぎ込まれたこと自体は、すでに想像しがたい。加えて兼好の叙述や意図するはずの文脈から明らかに離れた注釈者の思い入れや思い込みを読むと、苦笑したくなる思いだ。読者の知的好奇心を思い描きつつ、テクスト遺産というテーマにはまさに鮮やかな一コマだと思わずにはいられない。

こちらの事情でワークショップの前半のみの参加となってしまった。組織者の話によると、詳細は録画の形で後日公開とのことであった。後半の視聴、いまから楽しみにしている。

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