国文学研究資料館が運営する「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」のサイトをときどき開いている。日本古典の分野におけるデジタル人文学の発展を牽引するこの事業のありかたは、いまはいろいろな意味で象徴的な存在となり、遠くから眺めて、すなおに驚かされる。
これだけの規模や可能性を含んでいるサイトとして、そのデザインは、まさにユニーク。トップ位置にあるのは、「お知らせ」。それも最近の四点ほどのリストが、「すべてのお知らせ」と続く。いわば「更新記録」にあたるこのセクションは、その内容がまさに圧巻。ほぼ毎日のように膨大な分量、さまざまな所蔵機関からのデジタル化された典籍の公開が加わる。ここにいう公開とは、「日本古典籍総合目録DB」に統合される、そして近年脚光を浴びるデジタル公開のスタンダードに成長した「IIIF基準」に対応する、という二つのことを意味する。各機関から公開する典籍の点数にはかなりのふり幅があり、一点もあれば、一万二千余点と数える、今週月曜に加わった「国立国会図書館デジタルコレクション」もある。提供されたリンクをクリックすれば、資料リストの一覧となり、所蔵者、提供者へのクレジットとして読むことができる。一方では、国会図書館の場合のような、高精細公開のために撮影したものもあれば、「香川大学図書館神原文庫」のような、半世紀近くまえに白黒のフィルムで撮影したものを底本としたものもある。このようなまったく異質な画像が共存することに違和感を感じる向きもあるだろうが、古典研究に携わる者としては、ただありがたいと感じるのみだ。古典籍のオンライン公開は、まさにデジタル人文学の第一歩にすぎない。これをどのように利用するのかは、つぎに現われてくる課題だ。同じことは、国文学研究資料館がさまざまな模索をし、仕掛けを案出している。一方では、「みんなで翻刻」といった優れた事業も展開され、「市民参加型」と提唱されている。これに習い、まさに学習者参加型、クリエーター参加型、研究者参加型などなどの新たな可能性が待ち受けていると考えられよう。わくわくだ。
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