だいぶ古いニュース記事がたまたま目に入った。北京故宮が主催する、中国の古典絵画の魅力を音楽で表現するコンテストだった。たいへんキャッチなコンセプトのわりには、この行事の行方や結果などはさほど記録に残っておらず、関連の報道も見られない。古典をめぐる数々の模索の中の一つだったと思われる。それでもYouTubeに公開している二つの宣伝ビデオを繰り返しで眺めた。
ビデオの中では、中国の名画についてさまざまな現代的なアプローチの事例が開示された。絵の内容をアニメにすることはすでに方法的には確立された感があるが、現代的なタッチで古い絵を描き直し、二階建ての水車の構造や利用を伝え、あるいは鷹峰の地名を解説して空飛ぶ鷹がやがて山となって固まる。二番目のビデオでは、絵に文字を入れて、楽器の存在を浮き立たせて名前を加える。思いつかなかったのは、AI技術の導入だ。山々の画像から輪郭を抽出し、それをそのまま歌のリズムや詩の脚韻とし、それに文字を合わせる。一つの大胆な方法としての有効性や達成はともかくとして、名画に対面するにあたっての魅力的で、チャーミングな提案なのだ。中国の古典絵画は、日本のそれと較べて、叙事よりも詩的な美しさを追及する傾向が明かだった。それが絵の構図、作品の形態、名作をめぐる記述法、鑑賞法などもろもろの方面に現われている。そして、総じて音楽との距離も、日本のそれより中国のそれがはるかに近いと考えられよう。このような伝統に立って、デジタルやAIなどの技術を躊躇なく生かして古典の画像に立ち向かう姿勢は、まさに刺激的だ言いたい。
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