二日ほどまえに伝わってきたニュースの一つには、新たな国宝指定があり、今度「蒙古襲来絵詞」が筆頭になった。この絵巻が迂闊にもとっくに国宝だと思い込んでいて、いささか意外な思いでこれに接した。たしかに報道記事を読むと、「国宝級」などの記述が目立つ。「読売新聞」のオンライン記事は、三の丸尚蔵館が1993年に開館したこと、十分な保護があるため文化財の指定をされてこなかったことなどと親切に解説している。
「蒙古襲来絵詞」は、繰り返し読んだ経験がある。すでに二十年もまえになるが、その一端をある国際シンポジウムで発表し、活字記録まで残している(リンク)。さらに「音読・日本の絵巻」の一点として全文朗読を試み、欠字などにずいぶん苦しんだことを記憶している。一方では、その朗読の音声が妙な形でニコニコに登場した結果には、いまなお不思議でならない。(「「ニコ動」デビュー」)デジタル環境が凄まじいスピードで進化している中、この絵巻への満足なアクセスはずっと叶えられないでいる。これもずいぶんと昔から公開されたものだが、小さな画像での全巻閲覧、しかも模写本との比較、英語による注釈まで添えられたサイトが稼働されている。古典作品のデジタル公開をめぐるさまざまな考慮や躊躇は、すこしずつ過去のものになったいま、この度の国宝指定を機に高精細画像によるオンライン閲覧が実現できることを切に願いたい。
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