世界の図書館や研究機関所蔵の日本古典へのアクセスは、デジタル環境のおかげで大きく変容している。かつて調査のために経験しなければならないさまざまな苦労は、まるで不思議な昔噺になった。この週末も、暇を見つけてアメリカ議会図書館を覗いた。「日本貴重書デジタルコレクション」のもとに数えて三十七点が公開されている。
そのうちの一つ、『ほうみやう童子』。簡単に調べてみれば、『国書総目録』、『日本古典文学大辞典』、そして二〇〇二年刊行の『お伽草子事典』は、いずれもこの伝本を触れていない。一方では、国文学研究資料館「日本古典籍総合目録DB」はこれを掲載し、しかもフィルムありと記されている。ただ、実際に立川を訪ねてみなければ閲覧は難しい。そのような貴重なものは、いまやマウスクリック一つで高精細のデジタル画像がモニターに飛び出してくる。しかもダウンロード保存まで可能になっている。写真は、主人公の母が苦難を嘗め尽くした場面だ。なぜか『福富草子』のあの著名な打擲の構図を連想させてくれて興味深い。ここまで進化した環境をどのように生かすべきだろうか。遠い外国にある所蔵も簡単に閲覧できるようになったいま、研究も読書もそれに見合った対応が自然に要求されるようになる。新たな課題だと言わなければならない。
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