2022年8月20日土曜日

読則実例

先週取り上げた山東京伝の「読則」。それが作品の中でどこまで実際に応用されたのか、おもわず検証してみたくなった。幸いその実体はすぐ分かり、律儀に実施されているのだと、小さくほっとした。

述べられた「印」は、あわせて五つあった。『八重霞かしくの仇討』を披き、目で追っていくと、六丁裏~七丁表の見開きにそれらをすべて用いたことを確認できた。便宜に番号をつけて順に見ておく。

①〔よみはじめ〕。読み出しの部分は左の端に来た場合などは必要がないが、このページのように真ん中で文章が始まり、左側に文字のグループが複数あって、はじめて用いられた。

②〽。この記号は、人物の会話を表わすための定番のもので、いまさら必要だとはとても思えない。ただ、そのような会話が記述の文字の中に入りこんだ場合などは、やはりあると助かる。

③〔つぎへつづく〕。このページにある会話などを読まないでページを捲り、つぎのページにある文章を読み終えたあと戻ってくる、という指示なのだ。いまの感覚からすればかなりユニークだ。

④▲。■●など複数挙げられた中の一つ。文章の続き具合はこれでよく分かる。

⑤〇。長文の説明に、「唐土の小説に却説の両字を用る所に此印をおく」とある。内容的に新たな展開を示すことだろうが、いかにも読書人らしい工夫なのだ。

ちなみに、「〽」の記号を京伝は「小かぎ」と読む。いま、多くの人はこれの読み方も、入力の仕方もよく分からないと言えよう。調べたら、「庵点(いおりてん)」、庵の形をしているからこの呼び名となり、ウィキペディアにはこれの項目が立てられている。ユニコードは、「U+303D」。知っておくと便利だ。

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