2022年8月6日土曜日

故人を偲ぶ

朝起きて、北京大学厳紹璗先生の訃報が目に飛び込んできた。日付は6日、時差の関係で同じ日にニュースが地球を駆け回り、伝わったという結果になる。さっそく古い写真を一枚選び、SNSに貼り付けた

写真が撮られたのは、1985年1月、ちょうど修士論文を書くために苦闘していた時期だった。あのころ、テーマをどう選び、アプローチを如何にするかで、真剣に苦労していた。まさに学問の仕方をその基礎から学ぼうとしていた。その中で出会った厳先生は、まさに颯爽として古典の中を自由自在に往来していた。時代、ジャンルなどの拘りなどをまったく気にせず、とにかく中国との関連という一点で斬新な成果をつぎつぎと世に送り出した。まるで眩いような存在だった。同じ京都に、古典に志す中国人の先輩がいる、しかも研究をものにしているということだけで、なぜか大きく励まされた思いだった。

書誌学、比較文学の大家として、厳先生の中国や日本での華やかな業績などは、枚挙に暇ない。一方では、いまから思えば、研究などでじっさいに交わることはなく、研究会などに同席することすら一度もなかったようだ。ただ、共通の親しい友人が多く、おかげで懇親会などのような場で時間を共にすることは妙に多かった。もともと日本や中国に滞在する機会の少ないことにあわせて考えれば、不思議なぐらいだった。いうまでもなく、そこから習った多くのことは、貴重で忘れがたい。

厳先生のご冥福をお祈りする。

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