数ヶ月前、あるニュースレターに随筆を頼まれて、デジタル書籍に関連する自炊のことを書いてみた。今週、それが発行され、同じ文章を自分のサイトにも載せた。したがって、実際に「自炊」を試みたのではなく、あくまでも一つの議論を書いた「その後」ということである。
こういう性格のものだから、数ヶ月のうちに状況が大きく変わるものだろうと、最初から気になっていた。案の定、昨日のNHKニュースはそのような変化を物語る象徴的なエピソードを取り上げた。いわば電子書籍出版をめぐる出版社の対応である。報道されたのは、とある大手のものだった。担当者の仕事ぶりを見せるもので、それこそ数百冊のタイトル、億単位の売り上げをもつ一人のメジャーな作家に、一紙の契約を促すものだった。なぜかはらはらして目を疑った。スケールが大きいというか、いささか乱暴というか。はたしてカメラ前でその作家は戸惑いを隠さず、自分の作業に影響がないとまずは確認し、「編集者との信頼関係だ」と付け加えた。出版社の意気込みはたしかだ。ただ、そのような努力が、紙媒体が持たない電子メディアならではの特徴をしっかりと見据える未来志向のものにつながることを祈るのみである。
ところで、「自炊」という言葉はどうしても落ち着かない。はたして個人デジタル化という行動が続いているうちに違う表現に取って変わるのか、それとも将来になっても一つの風変わりな行動を記録するための変わった表現として覚えられるか、ちょっぴりしたみものだ。いずれにしても、「自炊」という行動がそう長く続くとはとても思えない。
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