2010年12月24日金曜日

歌サロンの再現

大学では、今年最後の一週間に入った。仕事締めくくりの合間に、同じ学科の教授が一席のコンサートを用意した。さほど宣伝もしておらず、集まったのはわずか200人ちょっとの規模にすぎなかった。しかしながら、だからこそ西洋文化伝統の一面を窺いえたような思いをして、短い時間をすっかり堪能できた。

コンサートのテーマは、同教授の最近の研究課題とも関連して、ポーリーヌ・ガルシア=ヴィアルド(Pauline Viardot)という名の十九世紀フランスの声楽家・作曲家である。ただし、これはあくまでも一つの枠組みである。この設定に沿って、自由自在に音楽の傑作が鏤められた。ステージに上ったのは、個人的な繋がりで迎えた世界レベルの歌手、大学が擁する国レベルのピアノ演奏家であり、加えていまだ在学中の学生四人による朗読が司会の役目を果たした。ステージの設計は、即興でいて、流麗。高い水準の歌や演奏は、言ってみれば観客の拍手の声をはるかに上回るものがあった。ここに奥ゆかしい音楽サロンの再現がコンセプトであるが、それについてほとんどなんの知識も持ち合わせていなくても、しっかりした伝統の力を感じえた。

歌のサロン。日本の伝統に置き換えるならば、さながら能楽あるいは連歌、といったところだろうか。ただ、そうだとすれば、能も俳諧も現代の生活の中で、こうも気軽にステージを構成できるとは、とても思えない。

An Evening in Weimar

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