2011年3月12日土曜日

人面蛇身

今週の講義テーマは、明の話本小説の一篇である。取り上げたのは、日本では「白蛇伝」で知られるあの話。中国では、それが杭州西湖にある雷峰塔の縁起話として有名だ。それも、現代の中国になって魯迅などの文人たちが伝統文化の最批判を込めて読み直し、それが高校の教科書にまで取り入れられたのだから、知名度が格段に高い。

110312話のハイライトは、いうまでもなく蛇の本身を見せたところにあった。蛇と人間との対峙という構図を基に、人間と異界、異界における道・仏・魔のパワー関係、人間世界の男女の間柄など、学生たちの議論はまさに活発で果てを知らない。中でも、担当グループの学生は、古典画像まで探し求め、頤和園の長廊に描かれた一こま(ウィキペディア所収)をクラスで見せた。このようなイメージになった白蛇は、もう無力で、どこか滑稽なぐらだった。蛇をまつわる伝説における日本の古典的な構図、たとえばあの十二類絵巻に見られるものを紹介して、読者の想像に合致するイメージとは、はたして人面蛇身か、はたまた蛇頭人身かと、学生たちに投げかけてみたら、案の定、かなり熱気を帯びる議論が沸きあがった。言うまでもなく、学生たちに興味を持たせられたが、これと言った答えを用意しているわけではない。

たしか半世紀前、ソビエトの科学者たちが熱心に取り込んだ研究の一つには、犬とロボットとの合体があったと聞く。そこにあったのは、まさに犬頭人身の怪物だった。あるいは、日本の構図こそ道理に適っているかもしれない。

ソ連の「ロボット犬」と「双頭の犬」研究

(週末にかけて、日本からは津波災害のニュースが伝わり、身辺では長年の同僚が病気で亡くなった。ご冥福を祈る。)

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