2015年11月21日土曜日

泣き笑い

大人数を相手にする講義では、毎回本題に入るまえに十枚程度の写真を見せながら、現代の話題を一つ提供するようにしている。ホットな話題もあれば、いたって常識的なものもある。この間の一回は、流行語大賞のことを取り上げた。そのようなところに、英語の世界でも今年の流行語が発表された。そしてどうやら史上初と称して、言葉でも文字でもなく、絵文字だった。

20151121もともと流行語と言っても、その流行の具合を図るにはいくらでも方法があって、かならずしもすべての人々が知っているわけではなく、現実的にはむしろその逆なのだ。その中で、絵文字というものにスポットを与えているということには、まずは注目してよかろう。ただ興味深いことに、選ばれた絵文字には、なんとりっぱな文字による解説というか、定義が付いているのだ。それによると、「喜びの涙の顔」だと言われる。泣き出してしまうぐらい喜んでいる、涙が出てしまったぐらい可笑しい、といったような感情を表わすものだろうか。その解釈や使い道はともかくとして、言葉の説明や定義を加えるということ自体には、むしろ考えさせられた。あまりにも多義で、こうしてまとめてみないと誤解が発生しかねない、言葉に直さないと、にわかに分からなくて伝わらない、といったことを無言に示しているではなかろうか。

事実、周りの学生たちとのメールやコメントなどを用いての文字によるやりとりには、絵文字がたびたび登場してくる。そのような状況に出くわすと、機会さえあれば、その意味を本人に正し、かつその場で他の学生の理解を述べさせるようにしている。そういう時には、歳や言語習慣の差に対する若者たちの明るい笑いに伴い、絵文字とは交流の手段としてけっして意義明瞭ではないことを繰り返し実感し、実証できた。一つの言語生活の実態として、ここに記しておこう。

「今年の言葉」は初の絵文字

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