2016年1月16日土曜日

デジタル公開・日本

先週ここで触れたニューヨークパブリックライブラリのデジタル公開について、そのあとやや長めのレポートが出された。感心の向きにはあわせてお読みください。そこで、日本での公開はどうなっているのだろうか。とりあえず個人的に関心をもっている日本の古典について眺めてみた。出発点は、とりあえず「デジタル・リソース(増訂版)」のリストである。

タイトル数と、公開に携わっている機関の名前を見れば、その規模はけっして小さくはない。中では、かなり早い時期に公開されたもの、あるいは最初からカタログ代わりに取り掛かったもので、画像の存在を知ってもらいたいが、デジタルで見てもらう考えを持たないものはさておくとして、わりあい高精細の画像を作成し、公開したところも多い。上記のリストを手がかりに順番にクリックしていけば、いくつかの共通項がすぐに見つけ出すことができる。まずは多数の機関が利用しているのは、「Flash」の方法での表示である。そして、公開にあたっての最大の不安は、不正利用という名の転用である。そこで、表示の窓を小さくしたり、煩雑にロゴを入れたりして、転用を不可能にすることができないと分かっていても、それをすこしでも不便なものにするという方針を取っている。タイトル公開についての図書情報や利用方法の提示はまったく統一しておらず、機関同士の比較や同じ基準での利用は、ほとんど不可能に近い。デジタル公開の基準、公開方法の確立と共有、そして技術力など限られた機関や個人のための手助け、これらはいずれも緊喫した課題である。いたって自然なことだが、これらの解決策は、まずは資料をたくさんもっている機関、あるいは研究を仕事とする国の研究所に期待するものだろう。

一方では、公開されているものの中で特出しているのは、やはり「e国宝」。このリソースが存在しているおかげで、日本の古典を語るうえでどれだけ安心した拠り所が得られたか、日本の外への発信のためにどんなに自慢ができたのか、まさに計り知れない。


0 件のコメント: