2018年8月4日土曜日

同手同脚

すでに十年ほどまえのことになるが、絵巻に見る人間の身体というテーマをめぐり、「ナンバ歩き」のことを書いた。そこで議論したのは、日本の絵巻においてほとんど例外なく描かれたあの歩き方、そしてそれが中国の画像文献にも見られるということであった。

同時代の言葉ではないにせよ、「ナンバ歩き」は広辞苑などにきちんと収録されている。これに対して、中国語のそれは、たとえ現代の言葉であっても、それを表現するものには思いつかなかった。口語的な、地域的な言葉なら、二、三の候補がないわけではないが、どう考えても、もうすこしまともな言い方があるように思えてならない。ずっと気掛かりなことの一つである。そこで、敦煌の絵を面白くおかしく紹介するウェブページがたまたま目に入った。ごく簡単なフレーズでの解説が施され、そこにはなんと一つの答えを提示してくれた。曰く「同手同脚」である。言われてみれば、すぐに理解できるような表現だ。念のためにこの言葉を中国語のサーチサイトで調べてみたら、たしかにそれなりに認知され、使用されていることを確認できた。おかげで中国語の語彙が一つ増えた。

ホスト大学での授業の中で、雑談として一度この話題を持ち出した。どうやら一部の体育の授業などでは、古武術の流れを汲む身体の訓練としてナンバ歩きを体験させているもようだ。それを知っていて、目のまえの学生たちに確かめてみたかった。その結果、たしかに実践させられた人もいたが、それに対して、「ナンバ」という言葉さえ知らなかった人のほうが圧倒的に多かった。この事実も覚えておきたい。

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