2019年6月8日土曜日

石置板葺

学生たちと歩く日本。ホスト校にほど近い「日本民家園」は毎回一度訪れる。広大な緑地の中に展開し、実物大の古家屋が軒を列なる様子は、ほかでは見かけられない風景を成していて、眺めていてとても見ごたえがある。

園内に入ってすぐの宿場エリアの最後に位置するのは、長野県にあった三澤家だ。建物の特徴的なことの一つには、その屋根の造りがある。周りの茅葺きや瓦葺きのものと違って、屋根の上にかなりの密度をもって置かれたのは、なんの変哲もない石ころである。じつは、これを見るたびに思い出すのは、あの絵巻「長谷雄草紙」に描かれた一場面だった。間違いなく同じような姿の屋根を街角の様子として描きこまれたものだった。初めてあの場面を眺めたころ、関連の知識を持たないまま、ずいぶんと戸惑ったことをいまでも覚えている。それをまるでタイムスリップのように、絵と現実の建物とが目の前でつながっていることには、やはり感慨深いものがあった。

説明の案内には、「石置板葺の屋根」とある。あまりにも明快で、いかにも第三者的な立場からの正確を期する解釈調のネーミングだ。当時の人々、自分の住んでいるうちや、これを建てた大工さんたちなら、これをどのように呼び指していたのだろうか。慎重に探すべき課題の一つだ。

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