昨日、「日本古典籍セミナー」を聴講した。二つの講義が行われ、それぞれ一時間とじっくり時間をかけて肖像画、奈良絵本について語られ、たいへん勉強になった。
個人的には、黒田智さんが取り上げた「公家列影図」にとりわけ惹かれた。画像内部に立ち入り、画像をもって画像を検証するというアプローチには、その手法の鮮やかさが印象に残り、その有効性にインパクトを感じた。あわせて57人と数える大臣の顔ぶれをユニークに描かれたこの一点は、絵巻の中で異色的な存在であり、早くからその読み方に躓き、敬遠していた。そのようなところに、描かれた人物同志の、親子、兄弟など血縁関係をもった者の比較、髭や皺などビジュアル要素を手がかりにした分類などが指摘されて、なるほどと納得し、いわゆる似せ絵といわれる由縁をあらためて知らされた。一方では、描かれた人物は互いに百年以上の距離を持ち、それぞれの人間のほんとうの顔を絵師がたしかに知っていたとは考えられず、人物の年齢表現にも極端な虚構が見られるなど、同作品の理解にはまだまだ多くの課題が残されているとの思いも強くした。現地で午後に行われた行事は、地球の裏となると深夜から真夜中すぎとなった。同じ北京開催のシリーズの三回目にあたり、一年遅れての実現だったと聞く。いうまでもなくオンラインでなければとても参加が叶わなかった。妙な形でコロナから恩恵を受けた格好だ。いまの非常事態が過ぎてもこのようなもありがたい可能性が受け継がれることをせつに願いたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿