巻物の思わぬ姿に出会った。まったく予備知識を持たず、正直どのように解釈すべきかいまも戸惑っている。正面から取り上げた研究はきっと存在しているだろうから、それにたどり着くまでに、ひとまず気づいた疑問などを記しておこう。
右の絵である。登場したのは、バチカン宮殿内に建てられたシスティーナ礼拝堂の天井画だ。あのミケランジェロ・ブオナローティによって描かれたもので、ルネサンスを代表する画作なのだ。描いたのは、聖書に登場する七人の預言者の一人であるヨエル、そのかれが羊皮紙の巻物を読み入る。それにしても、この巻物はどのような作りになっているのだろうか。一見して、文字が書かれた表の面が巻かれる軸の外側に来る格好になった。しかしながらさらに目を凝らしたら、両手の間において巻物は一度捩じられている。これなら文字の面が軸の裏側にくることになるが、そうであればわざわざ捩じってまで巻物を操作しなければならない理由は分からない。さらに言えば、文字の方向ははたしてどうなっているのか。見詰めるほど疑問の数が増える。材料、体裁、言語、文字、洋の東西においてその距離は思ったほど遠かった。写真は、「ミケランジェロが描くシスティーナ礼拝堂天井画の複製展示」からである。すでに北米のいくつかの都市で展示され、今月からここカルガリーにやってきた。決して上質とは言えない複製、会場もまったく飾り気のないものだった。それでも訪ねる人は後を絶たない。圧倒的な迫力をもつ原作に思いに馳せらせる意図には敬意を払いたい。インスタグラムに会場内外から数枚の写真を載せた。
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