真夏に入り、今日からちょっとした小旅行に出かける。いつものように出発までにあれこれと調べものをする。今度の旅先は、鉄道と関連がある。漫然とクリックしているうちに、右の一枚が目に飛び込んできた。
『頭書増補訓蒙図彙大成』巻三「居処」に入ったものである。ここに描かれたのは、二つの風景。後ろに建つのは「護摩堂」、前に連なるのは「駅」。書き込まれた文字は、「駅、むまやど」、上段に書き込まれた説明は、さらに「駅は道中のはたごや馬つぎをいふ。駅館とも又駅舎とも駅伝ともいふ」と読む。「駅」という存在をあわせて六つの言葉を連ねた。道路を行き交う人々は、「護摩堂」よりも後者の「駅」にかかわる風景なのだ。駅を彩るさまざまな人間を眺めると、飼料に食いつく馬や、荷下ろしをする宿の男、馬との長旅から解放されて座って一服する旅人を中心に、旅を急ぐ男はさらに三人描きこまれている。笠や頸から肩にかける袋が目を引く。一方では、三人も描きこまれた女性たちのことは、どうだろうか。それぞれの宿から送り出されて、客を引き止めるように務めているに違いない。すぐに思いつく言葉は、「飯もり」なのだ。
それにしても、訓蒙の図は興味深い。物を分解して標本のように示すものだとばかり思っていたら、こういう生き生きとした構図もあるものだ。一枚の絵に向かって、さまざまな言葉を用いて説明することができる。考えてみれば、それだからこそ、勉強のツールとしても最高だと言えるのではなかろうか。
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