二日にわたる研究会が終了したあと、京都博物館に駆けつけ、閉館までのわずかな時間をねらって展示を楽しんだ。つぎの特別展は二か月先、いわば主役不在の時期ではあるが、それでも見ごたえのものが多かった。なかでも特筆すべきなのは、やはりいまは世の中の関心があつまる改元即位にまつわる小規模ながらの特別企画である。
展示ホールの中心を鎮座するのは、「霊元天皇即位・後西天皇譲位図屏風」である。絵師は、あの「本朝画史」を著述したことで有名な、狩野家三代当主の狩野永納である。屏風は今回初公開となる。譲位、即位の詳細、画面内容の記述などをめぐる詳細な解説は、きれいな写真が添えられて無料で配布されている。二隻の屏風は、右隻は即位、左隻は譲位と構成され、とりわけ当時十歳の霊元天皇は、顔が正面から明晰に描かれていて、同様題材の屏風の中でも特異だと指摘されている。同時に展示されたものには、同屏風の摸本があった。こちらは白い紙に墨線で構図を慎重に描き写したのみに止まり、ただ文字の転写はかなり正確であり、一部今日になっては判読しづらい文字の内容を伝えてくれているところもあると、解説が教えてくれている。天皇の譲位、即位という一大国家行事をめぐる人々の視線、とりわけ敬いや憧れの念を抱きながらこれを記録し、そして描き写して手元に残すという姿勢が伺え、完成度のまったく異なる二つの資料が並べられて、得難い鑑賞経験となった。同展示はあと三週間ほど残っている。一見の価値があると勧めたい。
東京博物館の常設展は写真撮影を許していることからして、国立の博物館はすべて同じ方針を取っているとばかり思いこんだ。(「ドイツ初期銅版画」、「豚を料理」)なんとそういうわけではない。京博の常設展は撮影不可となっている。自分の不明を訂正し、いつかこの状況が変わることを願う。
特集展示 初公開!天皇の即位図
2019年2月19日火曜日
天皇即位の図
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