いつも感心や感動をもって眺めるものだが、仏像の世界にはあまりにも疎い。あの漱石の夢はインパクトが強いから(「梓慶為鐻」)、てっきりほとんどの仏像が一本彫りで、大きな幹から彫られたものとばかり勘違いしていたぐらいだ。NHK再放送の番組「運慶と快慶・乱世がうんだ美の革命」を見て、じつに多くのことを習った。
一時間の番組は、たくさんの興味深い事実を教えてくれた。運慶と快慶の合作とされるあの東大寺の阿吽金剛力士像は、なんと6102個のパーツから成り立ち、しかも二週間程度の時間で組み立てられたとか。いったん完成された仏像でも、さらに繰り返し修正が加えられ、まるで消しゴムを駆使するかのように、特定のアイテムを消したり、場所をずらしたりしていた。そのような数々の仏像を現代の研究者の手にかかれば、飽くなき探索の対象となってしまう。最先端の方法での撮影や透視、色測定などはいうまでもなく、微小だが仏像の一部を切り取って顕微鏡で観察して利用した樹木の特定など、大胆な方法も取られている。さらに現代の仏師の手による金箔による模様の再現とその役割の解説は、大いに蒙を啓してくれた。
運慶と同時代の「玄奘三蔵絵」は、仏像を作成する場面を描いている(写真、巻十二第一段より)。よく見れば、たしかに複数のパーツに分かれての制作なのだ。しっかりと記憶しておきたい。
2019年12月14日土曜日
仏像
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