2020年5月2日土曜日

朗読動画・妓王

ここ数日、集中的に作業をし、朗読動画を一つ制作した。奈良絵本「祇王」である。利用した底本は、京都大学付属図書館蔵、同貴重資料デジタルアーカイブで公開した「妓王」、上下二巻約9500字、朗読時間は約40分。これまでの朗読動画と同じく、音声にあわせて文字を行ごとに罫線で指し示し、中世の読み物を声とともに楽しんでもらい、その流麗な文字も読んでもらいたい。

物語は、ほぼそのまま『平家物語』(覚一本)巻一「祇王」を踏襲し、最初の数文字、最後の数行を加えた以外、文章の細部をそれなりに自由に書き換えたりした。一流の古典作品がこのように受け継がれていたのだと、具体的に示されて興味深い。古典の享受という視線で観察すれば、やはり十五図におよぶあらたな絵画表現を見逃してはならない。素朴で愛らしいという形で軽く纏められがちだが、それぞれの絵を虚心に見つめてみれば、新たな発見や考えをさせられるところは多い。たとえば、祇王が清盛のところを離れ、母や妹のところへ戻って泣き崩したところへ、誘いの手紙を送り込んだ男(上十オ)、清盛からの召喚への返事をひたすら待ち続ける若い公卿(上十二オ)、仏が三人の尼に合流した庵に居合わせた五人目の着飾した女性(下七ウ)など、小さな画面のなかに絶えず流れる時間、あるいは状況への絵師の理解が積み込まれ、読者にむかって物語の読み返しを無言に挑んだ。

動画制作に使ったのは、今度もAdobe Premiere。ショートカットのキーなども使えたので、しあげの作業はスムーズで、楽しかった。

朗読動画「妓王」

0 件のコメント: