一年まえ以上から企画のことが伝わり、長く期待していた行事は、コロナによる中止を経て、今週ユニークな形で開催された。仏教文学会・神奈川県立金沢文庫共同企画による公開講演「兼好と『徒然草』研究の最前線」である。観客が集まらない代わりに、登壇者が会場を訪れ、講演を録画してオンライン公開となった。海外に身をおく者として本来ならとても聴講が叶えられそうにないが、おかげで会場にいる気分で充実な講演を満喫できた。
『徒然草』やその研究に関心を寄せており、講演から得るところが多かった。それと同時に、講演公開の方法についても、あれこれと思った。録画の視聴は、会員なら郵送の案内によりその詳細を知り、非会員ならオンラインで申請してパスワードを教えてもらうという仕組みが取られた。さっそく所定のフォームを入力したら、翌日にも連絡が戻ってきた。思えば郵送と申請対応、この二つの作業だけでもかなりの事務の負担が生じたことだろう。ただ、それにより、非会員の情報の蒐集などが果たせられ、これからの研究や交流などにきっと有益だろう。集まったデータが活用されることを祈る。一方では、録画の公開は夏を目途に続くとの但し書きが案内に書いてある。はたしてどのような理由からだろうか、ちょっと不思議に思った。これまでなら、学会の機関誌にシンポジウムの記事を講演者が原稿にしたり、録音をもとに整理したりするのが普通だった。それに対して、録画公開まで辿りついたのだから、記録としても、伝播の方法としてもよりインパクトがあって、研究者から期待されるに違いない。有意義な行事を企画、主催し、公開まで成し遂げたのだから、まさにデジタル時代のあるべき形態だと言えよう。ここまで進めておいて途中取り下げるのではなく、新たな基準、すくなくともそれへの模索として公開利用ができるようにし、大事な布石としてもっと強く推し進めてもらいたい。
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