2022年4月16日土曜日

三つのつづき

今週披いた絵巻は、『信貴山縁起絵巻』。その第二巻、「延喜加持の巻」の詞書を眺めた。はじめて気づくことがいくつもあった。

出だしは、俵を鉢に載せて飛ばせたところを記した。その二行目からの三行において、「つづき」という言葉はじつに三回も現われた。無数の米俵は、「雁などの続きたるやうに」「続き立ち」、「群雀などのやうに続きて」飛び去った。三つとも「津ゝき」と書き、書き方も字の大きさもほとんどまったく同じだ。あえて言えば、「き」の字の縦線が、右下へまっすぐ伸ばす二つに対して、三つ目の場合は、縦線が沈みぎみに波打つ状態になったと見える。ここまで同じ言葉を登場させたら、文章としてどうしても素っ気ない印象だ。もともとその目で読めば、空飛ぶ雁が「続く」にぴったりだとしても、雀となれば一斉に飛び立つもので、両者のイメージにはかなりの隔たりがある。降りてくる俵の群れは絵にも描かれたのだが、はたして「雁」と「雀」のどちらにより近いものだろうか。

このようになんとなく思い返しているうちに、この絵巻をめぐる新聞記事が目に飛び込んできた(「国宝「信貴山縁起絵巻」第1巻公開中」)。国宝として博物館に寄託されているが、それが毎年に一巻だけ所有元の信貴山朝護孫子寺で展示され、そして寅年だけ一年のうちに三巻とも展示されることになっているもようだ。近くにいたら訪ねてみたいものだ。

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