古文クラスは二週の講義を終えたところだ。文法のルールだけではやはり面白くない。ありのままの古典にすこしでも接してもらいたいと思って、短い段落を持ち出してみんなで読んでみた。最初に取り上げたのは、「春日の里」(かすがのみさと)と呼ばれる『伊勢物語』の第一段である。
ならば、絵も併せて見せたくなる。これまで特別に集めているわけではなく、電子公開の多いところから調べて、簡単に手に入るものから使うようにした。早稲田大学図書館も国会図書館もデジタル公開で数点読ませてくれている。右は、月岡丹下画(寳暦六)(早稲田)の挿絵の一部である。それにしても、物語の原文にあわせて読めば、ツッコミ所満載だ。春日といえば鹿、目に入った女性が二人という、物語の構成はたしかに踏まれている。ただ、初冠の主人公、平安時代なら12歳との説まであるが、とてもそのような初々しさが見られない。狩衣の模様はどうやら草だろうけど、歌の読みどころである「しのぶずり」を表現するにはやはり程遠い。もともとほかのバージョンだと、それが紅葉だったり、丸い紋だったりして、いっそう関連性が薄い。そして、そもそも物語に伝えたところでは、「裾を切りて歌を書」いたのだが、そのような簡単に表現できるものでも無視されて、男がそのまま裾に筆を走らそうとしているのだ。
版本の絵柄は創作の到達を成し、このような構図を起点としてさらに屏風や、ひいては新作の絵巻などまで作られたことが多く報告サれている。「吉野の里」に関連すれば、どのような展開が広がったのだろうか、いつかじっくり調べたい。
2019年1月26日土曜日
春日の里
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