朗読動画『敵討義女英』を制作したことから、黄表紙への興味が続いた。自分自身が研究分野とする中世の文学とは時代が違うとはいえ、絵画と文字をあわせもって物語を伝えるということが絵巻に通じ、その豊穣な世界に魅せられる。
一方では正直、まだまだ原文を自由に読めるまでの実力を持たない。じっくり眺めればなんとかなるだろうが、普通の読書のスピードと比べられるものではない。そのため、自然に活字で読めるものを探し求めてみる。こと黄表紙にかぎって言えば、その手ごろな長さも手伝って、先人たちによる成果が驚くほど多数残されている。その中のいくつかは、はやくも明治の後期や大正の時期に遡る。百年近くも前から、いまの自分と同じ思いを抱いていた読者がいたのだと考えてよかろう。ちなみにそれだけ年代が過ぎたから、すでに著作権の保護期間が終わり、その多くはオンランでマウスクリック一つでアクセスすることができる。ここに、活字になった黄表紙作品の目録を作ってみた。名付けて「黄表紙活字目録」。すでに三百作近くなっているが、今日はまずその中から135作ほど載せて第一弾とする。
一つの学生時代の思い出がある。十数人ほどの大学院生が共同で利用する部屋で、江戸文学を専攻する先輩の一人は、草双紙類の作品をどさっと机の上に広げ、かたっぱしから読んで一人でよく笑っていた。なぜかまるで映画のワンシーンだった。いまの学生が同じことをしようと思うなら、きっとパソコンのモニターを睨み続けることだろう。
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