2019年6月1日土曜日

龍口寺

学生たちとの予定の行事が済んだあと、一人で近所を歩き回るのは、引率としての楽しみの一つだ。今度は、片瀬江の島の浜辺で解散して、その足で近くの龍口寺に入った。

日蓮という人物は、鎌倉時代の思想や仏教を教えるにあたり、避けては通れない。とりわけ短い時間で説明して記憶に留めてもらおうと思えば、かれの思想や行動だけではなく、かれにまつわる信仰や伝説、そして伝説を作らせ、語らせることも含めて取り上げたほうが有効的だ。そのため、この寺に惹きつけられる。山門を潜りぬければ、まずはその重厚な建物、そして喧噪を離れた静寂な空気には驚いた。本堂よりもりっぱに見える大書院(調べてみれば、昭和に入ってからの移築された建物だと知る)、厚い緑に囲まれて写真どころか、目にさえ入りきれない五重塔、どれもこれも、すぐ近くの観光地鎌倉とはまるっきり別世界になる。一方では、ここは日蓮のゆかりの地だということは、複数の石碑がどれもあの独特な書体による「南無妙法蓮華経」を碑文にすることが示している。

かつて「太平記絵巻」などを手掛かりに、絵巻に描かれる処刑の場の象徴を「敷き皮」に求めてみようとした。しかしながら、龍口寺には、「敷皮石」や「敷皮堂」が残っている。この大事なキーワードは、どうも想像以上に広がっていた。再考の機会を待ちたい。

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