2020年1月25日土曜日

百鼠図

中国の暦では、今日の日付をもって子の歳が始まった。「春節」とよばれる新たな一年の始まりは、中国国内の最大の祝日であり、いまや世界でも広く知られ、祝福の言葉が交わされるようになった。一方では、干支の文字は古風な言い回しに止まり、普段の表現としては、あくまでも「鼠」である。

鼠の年を迎えて、それをめでたく寿ぐ方法は、さまざまと案出され、楽しまれている。中では、ちょっと思いよらないものもある。たとえば、「百鼠図」。写真はその一例である。百の図と名乗り、同じ文字の異なる字形を百と集め、それを丁寧に書き並べるというのは、予想以上に長い伝統を持つ。その中で一番有名なのは、寿の文字を集めたものがあげられよう。清の文人の記録によれば、宋の時代にすでにそのような作品があり、しかも岩に刻まれたと伝わる(銭曾『読書敏求記』)。あとは「福」「禄」などの文字もよく書かれる。ここにいう百の違う字形は、古い篆書の恰好をしている。実際に伝わる象形文字、金石文字などの実例を寄せ集めたのが中心になるが、一方では楷書や行書の字形、ひいては文様パターンなどまで取り入れてのオリジナル字形も創出され、用いられている。これも同じく右の実例を眺めればすぐ分かることだ。

それにしても、鼠の文字を一面に書かれたものをどこかの壁に掲げて飾ることは、想像してちょっぴり落ち着かない。あくまでも廻ってくる新しい春を祝う一種の遊びだと、書く人も賞でる人もそう思っていることだろう。

2020年1月18日土曜日

FBページ

江戸時代の盛んな出版や旺盛な読書の産物として、絵による「徒然草」の注釈が複数制作され、ながらく享受されてきた。それらの注釈絵をいわゆる四コマ漫画風に読み、そしてその読み方をGIF動画の形で伝えてみることになんとなく誘われた(「四コマGIF」)。手軽に作って公開したら、いつの間か十点を超え、週二回更新して、しばらくは続きそうだ。

はっきりしたテーマなので、どこかまとめて置いたほうが良さそうに考えた。一方では、FBが提供している「ページ」という機能にはまえから興味があって、はたしてどのようなものなのか、やはり使ってみないと分からないから、これにあわせて利用してみた。「注釈絵で読む「徒然草」」という名でFBページを立ち上げた。運営の仕方やその狙いなどには、いろいろと隠された工夫があるだろうと、好奇心半分に想像していたのだが、いまのところ、これといった大きな感触はない。たしかに例えばグーグルサイトとはかなり違う。言ってみれば、一方的にまとまった情報を見せるのではなく、グループや同好の仲間たちが頻繁に交流することを前提に枠組みを設けてくれているのだろう。その分、アナウンスまでにはいっさい反応はなく、ページの目立つところには、制作者に向けて「友達に「いいね!」をリクエストしよう」とあからさまに説教する。なんとなく落ち着かない気分だ。

GIF動画はツイッターにも掲載している。これを機に纏めてタグを付けておく対応を取った。ただこれまでのツイートに手入れする選択は用意されておらず、やむなく十一点目から実施することにした。(#注釈絵で読む徒然草

注釈絵で読む「徒然草」

2020年1月11日土曜日

中世文書WEB

今週話題になった新たなデジタル資源には、国立歴史民俗博物館が公開した「日本の中世文書WEB」がある。公開の日づけは1月8日、下知状や綸旨、起請文など8点の資料が掲載されている。

このサイトが提供したユニークな機能は、文書の読み上げ機能、説明にある「(略)音声を再生すると、カラオケ式に読んでいる部分の色が変わ」るというものである。平安や中世の古文書は、資料自身の性格から、どうしても狭い専門の分野に属し、普通の読者には近づきがたい。歴史を専攻する学生にとって必須の訓練にはなるが、そこから一歩でも離れた読み手には、なかなか手につかない。古文書をめぐる読み下しの法則、読解の仕方などをテーマにする参考書は、初心者のための入門書から膨大な用例を網羅する辞書まで、数えきれないほど刊行されてはいるが、そのような知識に丁寧に従っていても、いざ声に出して伝えようとすれば、どうしてももどかしくて、心もとない。そういう意味で、音声を伴うサンプル資料の出現のおかげで、中世の文書が大いに身近なものに感じさせてくれた。

このサイトの作成は、企画展示「 日本の中世文書―機能と形と国際比較―」の成果だと説明され、かつ資料の内容も「今後も続々追加予定」と予告されている。一方では、オリジナルに開発されたサイト構築は、一つのプラットフォームとして利用できるようになれば、より広い範囲の資料などが音声とともに紹介されるのではないかと想像している。可能であれば、実現してほしい。

日本の中世文書WEB