2020年11月28日土曜日

オンライン講座

先週の火曜日、中国人民大学の主催で「古典の未来学と『徒然草』」とのタイトルのオンライン講座が設けられ、荒木浩さんの講演があった。いま時のインターネットの環境に助けられ、地球の裏側から参加することができた。講座はすべて日本語によるもので、中国各地からの参加者が集まり、日本やカナダとはまたかなり違う中国の教育や研究の現場を覗いたような気がした。その様子は、さっそくこのような形で報告された。

個人的には非常に贅沢な時間でした。思えば過去四年間研究会に参加させてもらい、毎年一回か二回、京都に通うことが続いてきた。それだけに、同プロジェクトにかかわるいろいろな話題やそこから得られるさまざまな知見などに改めて接し、得るものが多かった。とりわけ新刊の『古典の未来学』をはじめ、『源氏物語』と南伝仏教、松永貞徳とキリスト教、『徒然草』への多彩な学術や教育の視点など、自分の関心に沿ったものが多く、行事が終わってからもながらく反芻を続けた。

講座は二時間半の日程で進められ、最初の二時間は一刻の休止もない講演の続きだった。オンライン会議では参加者は音声やビデオを止めて聴講することがエチケットとなっている。そのため、聞く人の顔が見られず、声も聞こえないままのお話は、思えばかなり過酷な条件なのだ。いまごろの研究者には、知らないうちにこういう能力も問われるようになったと言えようか。

2020年11月21日土曜日

百番達成

「江戸の注釈絵で読む徒然草」、知らないうちに百番公開を達成した。友人はツイッターにてわざわざ祝賀のメッセージを残してくれて、一つのまとまりの良い数字に到達したのだとあらためて気づいた。

そもそも「四コマ」ということを持ち出したのは、注釈の一段(53段)が綺麗に四つの画面におさまったことからヒントを得たからだった。四つの画面となるのはごく少数だが、その代わり、「四コマ」を一つの読み方だとすれば、どれもこのアプローチに対応できる。さらに、パソコン画面での表示から小動画にたどり着いた(「四コマGIF」)。最初の一点をFBやツイッターにあげたのは、去年12月3日と、ほぼ一年前。やがて「四コマ」という目で『徒然草』絵注釈を読みなおし、作品を『なくさみ草』と『つれつれ艸繪抄』の二作に絞り、全作から半分程度を目途に選び、使用の画像をデジタル公開からダウンロードし、画像に対応する原文を取り出し、それに現代語訳を加えるという一連の作業を続けた。動画にすることは一番最後のプロセス。これがとても単純なものなので、十点程度まとめてやるという方法を取った。一定の数があるので、順次公開という方法を試そうと、週二回(月曜、木曜)と決めた。途中からまとまって見られるところがあればと、前から試そうとしたFBの特設サイトを立ち上げた。さいわい無事に続けることができ、百番に取り上げたのは『徒然草』の209段。あとは十数点と予定し、一年ちょっとでこのプロジェクトを終えるという計算になる。

日常的に進めてきたので、その時その時の読者ーーやはり知人友人が中心だがーーからのリアクションは楽しく、そしてなによりも励みになる。毎回ほぼ即時に「いいね!」を押してくれる人もいれば、纏めて見て応える人もいて、メールを交わした折に感想などを教えてくれる人もいる。いうまでもなく小動画というのは一つの伝え方にすぎず、そこからいろいろと感じ取らせたのは、原作の魅力にほかならない。なによりもこの作業を続けてきているわたし本人が、たえずその絶妙の語り口に魅了されるのだから。

2020年11月14日土曜日

Glide

サイト活用関連の記事を読んでいると、「Glide」というツールの存在を知った。さっそく覗いて、提供されたサンプルに沿って試してみれば、いとも手軽にアプリの構築ができた。非常に気に入った。ここ数日、けっきょくこれに打ち込み、最初の作品として「Classical KANA」を仕上げた。

振り返ってみれば、まったく苦労がないわけでもなかった。けっこう戸惑ったのは、かな作品の前後移動だった。リストに戻れば、つぎの作品にアクセスすることはできるのだが、一々リストに戻ることはやはり煩わしい。簡単な要望だが、いざ実行しようと思えば、まったく思うとおりにはいかなかった。そこで試しに開発者に聞いてみたら、なんと数分のうちに返事が戻り、そのまま三、四回のやりとりを経て、狙ったことは完璧に実現できた。親切に応対してくれた方には、ほんとうに感謝する気持ちでいっぱいだ。そして、こうやって苦労した数時間も、過ぎてしまえば、素晴らしい経験となった。

アプリの中味は、これまでの特設サイトの内容をそのまま利用した。じつはこれのアプリは数年前にすでに出している。ただ、そのアプリは同僚の手を借りて作ってもらったもので、そのあとの、GoogleやApple側の頻繁な更新にはとても応えられず、それに加えて、先週触れた「e国宝」サイトのリニューアルも加わり、現実的に諦めかけている。そんなところへのこの作業だ。今度はすべて自力で賄えた。さらに前回のアプリで割愛させられたクイズまで取り入れられた。この成果には、いまのところ、大満足だ。

Classical KANA

2020年11月7日土曜日

リンク更新

先週のおわり、「e国宝」リニューアルのニュースが飛び込んできた。さっそくサイトに入って覗いた。公開の内容が増え、インターフェスも一新し、IIIF非対応だが、画像閲覧のスピードが明らかに早くなった。しかしながら、よく見れば、作品ごとのリンクはなんとかこれまでのが継承されたが、画像の部分表記のリンクはすべて切れた。これはちょっとたいへん。

これまで主に二つの特設サイトで「e国宝」の部分表記リンクを利用した。「古典画像にみる生活百景」と「動画・変体仮名百語」である。前者は約半分、後者はそのすべてにおいて「e国宝」の画像を利用し、そしてオリジナルものへのリンクを添えた。特定のテーマにあわせて古典画像の魅力を紹介するというのがそもそもの狙いであった。そのため、部分表記リンクが動かなくなれば、サイトの狙いの目的は達成できない結果になる。さっそく対応しなければならない。さいわい、リニューアルした「e国宝」は相変わらず部分表記リンク取得の方法を用意してくれた。それを順番に取り、これまでのページに貼り付けなおした。ページは基本的なHTMLで作成したものなので、マニュアル的に一つずつ書き直さなければならない。原始的な手作業で、けっこうな時間を費やした。

作業を終えて、週末には「第6回日本語の歴史的典籍国際研究集会」を聴講した。そこで交わされた議論は、まさに新たなデジタル資源の利用をめぐるさまざま実践や考えなのだ。東京大学のチームによる「デジタル源氏物語」に関連する一連の発表はとりわけ印象に残る。おもえばあのような膨大な作業を有意義なものだと保障するのは、さまざまな資源の存続である。「永久リンク」も話題に出たが、どんなに声を大きくして強調しても言い過ぎではない大事な課題の一つである。