2016年10月22日土曜日

有料データベース

研究者たちの集まりに参加する楽しみと言えば、多様な発表に接することもさることながら、多くの場合、正式な日程以外での会話から有意義な交流が生まれてくる。先週週末、バンクーバーで交わされた話題の一つには、日本研究に大事なツールである新聞などの有料のデータベースへのアクセスがあった。

その会話によって触発されたあれこれと考えを反芻しているうちに、先日、格好の実例に出会った。大学の研究室のドアを叩いて入ってきた熱心な学生は、切実な表情をして、明治の新聞記事にどうやってアクセスするかとの相談を持ちかけてきた。当然ながら、現実的にはお手上げだと答えざるをえない。考えてみれば、「聞蔵II」、「ヨミダス」、「毎索」など、日本のメジャーな新聞はいまはどこもデジタル検索に対応しており、日本の大学にいれば、おそらくどれも当たり前のように簡単に利用できることだろう。しかしいざ海外に身を置いてみれば、どれも高価な利用料を特徴とするそれらのリソースは、まるで別世界のものであり、日常的には予想にも寄らない。このような現状を変えるための手がかりは、あるいは研究機関の連合体、あるいは日本研究や教育を支援する公の機関の力を借りなければならないのだろう。

自分が取り掛かっている研究課題はもちろんのこと、とりわけ若い学生たちの日本への熱心な眼差しを見れば、やはり手を貸したくなり、エールを送りたい。ただ同じことは、たとえ日本にいても、高額なリソースへのアクセスということで、地域や教育機関の規模による格差がすでに出来上がっていると聞く。デジタルというメディアの性格からすれば、縁の遠いはずのものであり、真剣な対応が待ち遠しい。

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