学生たちと英語で読む古典、今週のテーマは謡曲「敦盛」。能とは何かというところから話を始めなければならないので、伝える知識を最小限に絞り、悲劇の英雄のありかたや中世的な視線を解説することに力を入れるように心がけた。言葉そのものにいまだかなりのハードルがあるため、舞台の録画よりも絵のほうを取り出して見せるようにした。
すでに五年近くまえのことになるが、『中世の物語と絵画』の一章として奈良絵本にまつわるデジタル環境のことを纏めたことがある。その中での一つの実例として、『小敦盛』諸本関連のデジタル公開を触れた。それを改めて読み返し、急速に変化する現状と照らし合わせた。結論から述べると、早稲田大学図書館蔵の全点公開、神戸市立博物館、サントリー美術館のサムネイル画像公開は引き続き利用できることに対して、国文学研究資料館蔵と慶應大学図書館蔵の二点はともに新たに撮影され、しかも今年に入ってからIIIF基準に準じてデジタル画像公開に至った。同じタイトルでも、わずかの時間の間にデジタル公開の状況が大きく前進したと言わなければならない。
クラスの話に戻るが、学生たちによるグループ発表に一時間の時間を与えた。若い学生たちは、いつもいまの日常から何らかの話題を拾ってきてクラスを楽しませている。それは、たとえば武士といえば黒沢の映画といったような、なんとなくかなり焦点がずれたものとなってしまう。しかしながら今週のそれは、「水曜日のカンパネラ」の最新アルバム「SUPERMAN」からの一曲「世阿弥」を流し、しかもインターネットで公開されているファンによる英訳まで添えた。ここまでなれば、教える自分はしっかりと教わった。
たとえば「小敦盛」と題する絵巻。デジタル公開(部分公開を含む)は五点と数えられる。五年ほど前に記録した状況と比較すれば時の進化を改めて知る。
「世阿弥」(水曜日のカンパネラ)
2017年11月11日土曜日
謡曲敦盛
Labels: マルチメディア
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