2018年11月17日土曜日

漫画家の流儀

先週は二日にわたり珍しい行事があった。日本から漫画作家を迎え、大学のキャンパスで二回のトークや作画実演、そして一回のワークショップが行われた。熱意のこもった若い学生は大勢集まった。人数限定のワークショップへの参加には、自作を提出させて競争させ、半分近い学生を断らければならなかった。

壇上にあがった漫画家は、前半にさまざまな質問に答え、後半に作画の実演を披露してくれた。淡々とした真摯な言葉からは、普段あまり考えもしない独特なプロフェッショナルな世界を垣間見る思いがした。漫画の創作には、ストーリを組み立てることに絵を描くのと同じぐらいの時間を振り当ていること、絵を描くには助手に手伝わせ、しかもその複数の助手がまるで分身のように長年務め、細かく決められた分業を守っていることなどなど、認識を新たにさせてくれることばかりだった。後半の作画実演も素晴らしかった。随行をしてきた編集者の方は、つい親切に解説を試みたのだが、満場の聴衆は、ただ息を凝らしてマジックのように形を持っていく絵を見つめていた。熱心な学生は、ずっとカメラをスクリーンに向けて録画を撮り続けていた。

ちなみに、作画実演に描いたのは、典型的な女性像だった。このような集まりには、カナダの風景や異国の人間でも取り上げてくれるのではないかと漠然と予想していたが、まったく的外れだった。考え直してみると、漫画と絵画のスケッチとはそもそも別質なものだと、はっと気付かされた。

トークショーの様子レセプションの風景

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