2021年8月1日日曜日

人それぞれの徒然草

「徒然草」朗読動画の公開を続けている。その中で、ポットキャストを聞いているSpotifyの推薦作の中に、「人生がより豊かになる243の徒然」というのが飛び込んできた。どうやって自分の関心事をここまでピンポイントで察知してくれているのかは別として、「徒然草」をめぐってこういうアプローチもあるのだと、まず率直に感心し、いくつか聞いてみた。

音声の内容は、二人の男性による対談形式で、あまり余分な突っ込みや脱線せずに、「徒然草」を順番に取り上げ、一回四分間程度のものである。中心をなすのは、原文の現代語訳というか、現代の感性に基づく超訳である。一通り好感が持てた。一方では、「吉田兼好」と連発するなど、いまごろの研究成果などには最初から感知しないというスタンスで、そういう意味では普通の読者においての平均的な読み方を呈しているとも言えよう。古典の名著を知りたい、すこしでも原典に近づきたい、といった現代人の思いは、けっきょくこのような形ですこしずつ結ばれてゆくものである。

もともと読者にはそれぞれの徒然草像を持っていよう。似たような目で見れば、アマゾン書籍で眺めたら、『眠れないほどおもしろい徒然草』、『仕事は「徒然草」でうまくいく』、『ヘタな人生論より徒然草』など、古典の魅力というか、現代人の思い込みがふんだんに持ち込まれた読み方が踊る。この現象は、一方では兼好の文章、兼好の言説にそこまでさまざまな思いを託すことのできる相手なのだと物語っているにちがいない。

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