今週、中国の地方新聞を賑わせた一つの小さなニュースがあった。「七君子図」というタイトルをもつ一巻の巻物が地方の美術館である蘇州博物館に所蔵され、報道関係に公開されたということである。
ここでは、君子とは竹のことであり、竹をもって聖人君子の清らかな性格を喩えることからこのような対応関係が生まれた。従って「七君子図」といういかにも文人風のタイトルをもつこの巻物の内容は、七枚の異なる竹の絵の寄せ集めである。巻物を仕立てたのは清の時代まで下るもののようだが、描かれた絵は、元の絵師のものだ。六人の絵師の七枚の作品が納められたこと、中の二人はこれ以外確認できる絵作が伝わっていないこと、現代に入ってからの所蔵者が台湾に渡ったこと、中国の国宝(「一級文物」)に指定されてずっと中央の美術館に保存されてきたことなど、人々の注目を集める要素はいくつもあわせ持つ。そこで、今度は中央に寄託されたものが地方に返されたという形での古美術品の所在が披露され、関連の報道にはいずれも「故郷に戻る」との言葉が踊る。
興味を感じるのは、ここに見られる絵と巻との二つの形態の融合、とりわけその意図と理由である。いわば巻物を作成するために絵を描くのではなく、すでにあった絵のもっとも理想的な保蔵手段としてそれを巻物に仕立てたのだった。一巻のものに纏められていても、共通のテーマをもつ複数の名作であり、鑑賞する人々もそのような気持ちでこの巻物に対面する。日本のものからあえて性格の近いものを求めようとするものなら、古書の手鑑的なものだろうか。中国の伝統における絵巻がもつ一つの見逃しがちな側面である。
ちなみに新聞記事などを見れば、この巻物のことを「画巻」ではなく「長巻」とした。どこまで意図的な使い分けか定かではないが、意味深長な言葉選びではある。
国宝「七君子図」永帰故里(『姑蘇晩報』より)
2009年8月22日土曜日
寄せ集めの絵巻
Labels: 漢字を育んだ時空
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