2009年12月5日土曜日

古写真

夏ごろの事だった。一人でバンクーバーへ旅行し、友人との昼食の席上、古写真のコレクターであるハル女史(Ms. A. Hall)という方を紹介された。幕末から明治にかけての古写真を蒐集し、今年の春先にエドモントの美術館で展覧会を設けたばかりとのことだった。楽しい会話から程なく経って、その展覧会のカタログが一冊送られてきた。

カタログの説明によると、ハル女史がコレクションを始めたのは、すでに四十年前のことであり、ご主人から新婚のプレゼントとして一冊のアルバムが贈られたのが、そのきっかけだったとか。コレクションの中味はいまやすでに800枚に上り、展覧会にはその中から200枚ほど出品され、カタログにも約100枚収録された。

幕末の日本を収めた古写真は、いうまでもなく非常に魅力のある分野であり、膨大な関心を集めている。気軽にいくつかのキーワードを入れてオンラインで検索してみれば、たとえばYahooには「古写真」というカテゴリーが用意されているぐらいだ。大学図書館などが運営するデーターベースなども複数あって、写真を眺めて興味が尽きない。

写真という技術の成立は、19世紀30年代の終わりに遡れる。一方では、写真に収められた日本は、当時の西洋人の好奇心に満ちた視線を映し出しながら、日本ならではのタッチがすでに施されている。このカタログの解説によれば、撮影された写真に色つけを加えるというこ091205とは、ほかの国ではさほど見られず、もっぱら日本的な試みだとされる。そうだとすれば、色への感性や希求ということもさることながら、浮世絵の絵師たちの存在と、その職人的な腕前がこれを可能にしたに違いない。カタログの巻頭を飾ったのは、まさにそのような職人の仕事ぶりだ。武士、美人、飛脚、ひいては刺青や駕籠など、幕末の古写真といえばすぐ思い浮かべるような場面とはまた一味違った、ユニークな風景だった。

ちなみに、展覧会のタイトルそのものはずばり「KOSHASHIN」だった。英語を話す人にはもちろん伝わらず、解説文に英訳を添えられた。ただ、それは「old photo」ではなく、「period photographs」だった。なお、同じ時代の西洋の写真のことを記述して、「early photo」という述語がより多用されているらしい。豊穣なビジュアルの世界、西洋のそれに併せて、探求を試みたい。

幕末・明治期 日本古写真メタデータ・データベース
日本残像

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