2010年6月19日土曜日

バックパックに巻物

短い中国旅行は、じっくり周りを見て回る時間さえ持たないまま、あっという間に終わってしまった。旅行の終着地はいつでも空港だ。ただ今度は飛行機トラブルに巻き込まれて、二日も同じ空港ロビーをうろうろするはめとなった。おかげでそこの風景だけが印象に残るようになった。

100619 空港には観光帰りの外国人の姿が多い。それも元気のよい若者が目立つ。そのような人々の装いから、ここが中国であってほかの国ではないという要素を一つ見出そうとすれば、間違いなく巻物を手にするということが挙げられよう。それも意外なほどに頻繁に目撃するものだった。中国からのお土産に部屋を飾る掛け軸、といったところだろうか。若い人になれば、それがバックパックの中に半分差込んだり、あるいはバックパックの外に繋ぎ止めたりするスタイルだ。どうしてもあのオリンピックの閉幕式に登場した西洋人のキャラクターを思い出す。もともとあれは開幕式のショーと対応させたもので、巻物は画巻、しかも両方の軸に半分ずつ巻き上げたままバックに突っ込ませるという乱暴なやりかただった。あれをテレビで見たとき、突拍子もない作為的なものだとかなりの違和感を感じたのだが、空港でそれと瓜二つの若者たちを見て、かれらを止めて、あの閉幕式を見たかどうか確かめてみたい衝動にまで打たれた。

搭乗までの待ち時間に、三人連れの若者と会話を交わした。仲良しのカップルは漢字の掛け軸を手に入れたことを自慢にして、「愛」ともう一つの「女」がつく文字だったと説明し、三人目の人は虎の干支を刺青にした腕を披露してくれた。文字を知っていないだけの神秘と憧れを感じさせて微笑ましい。

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