2010年8月7日土曜日

書き人知らず

書き手の名前が記されていない匿名メールは、そもそも削除して読まないと相場が決まっている。しかしながら、時にはまったく違う文脈でそのようなものに出会う。今週も一度そのような経験をした。

なにげなく入ってきたのは、二年半ほどまえに公開した「義経地獄破り」サイトに関連するものだった。一点の間違ったリンクの存在を指摘してくれた。完全にサイト作業の手落ちで、これまで気づかなかったのが不思議なぐらいだ。メールの内容は、とても親切。間違い指摘という用件とともに、青森のまつりに出かけてこの作品のことを知り、インターネットであれこれと調べて音読の試みにたどり着き、さらにファンタジックな古典をもっと読みたいなど、朗らかな内容だった。このような読者に役立てるとは、うれしいかぎりだ。いうまでもなくさっそく間違いを訂正し、お礼の返事を送った。

和歌では、無数の「詠み人知らず」の作品が存在する。それにならっていえば、匿名のメールは、まさしく「書き人知らず」と言えよう。返事を期待する、関わりを明記させるなどと思われなくない、という遠慮の表われだろう。きっとそれに違いないと思う。

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