2010年10月23日土曜日

ロールとコデックスの違い

大学の同僚がとても興味深い本を教えてくれた。「The Archimedes Codex」というタイトルで、アルキメデス著作の古写本の発見と、デジタルによる復元を記述するじつにスリリングな一冊だ。その中で、西洋文明史における記録媒体の変遷を述べて、巻物と冊子本との違いをつぎのように捉えた。

冊子(codex)の普及には時間がかかった。それは紀元一世紀から始まり、一応の完成を四世紀の終わりまで待たなければならなかった。筆者にとって、このプロセスがこれだけ長い時間を掛けたことが一番の驚きだった。冊子の非凡なところは、知識の記録を巻物(roll)のように二次元ではなく、三次元で行うことだ。巻物には、丈と幅を持ち、冊子には、丈と幅と背丈を持つ。背丈を持ちえたおかげで、幅のことはおよそ重要ではない。200葉(folio)(400頁)、幅15センチの冊子は、巻物なら同じ丈で幅60メートルのものとほぼ同じ記録のスペースを持つ。冊子のページがきわめて薄いので、冊子の厚さをわずかに増やすだけで幅を驚くほど短くすることができる。さらに、巻物で特定のデータにたどり着くために全体の幅を対象としなければならないが、冊子の場合、厚さを対象にするのみで、それもたいてい2、3センチにすぎない。(71頁)

このような記録媒体のありかたを踏まえて、「古い文献の内容(の存続)にとって、情報技術の進歩ほど危険なものがない。大量のデータの移転が必要とされ、だれかがそれをやらなけれならないからだ。」と言い切った。日本の文明において、この一側面がなかったかどうか、質問の一つとして心に留めておきたい。

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