暦の上では、今日は辰年の大晦日で、明日からはようやく巳の年が始まる。ただこのような干支の暦を案出した本場の中国では、いまや辰や巳という文字が印刷されたカレンダーなどにのみ現われ、人々の会話や感覚では、遠の昔から「蛇年」との表現が定着したものである。
そこで、蛇年を迎えて、中国の絵に登場した蛇の姿を求めようとしたが、さすがに簡単には歴史ものに辿り着けない。きっと古くから描かれ続けてきたものに違いないと想像はするが、いざ蛇を真正面からテーマに掲げるものを見つけようとしたら、苦労するものだ。そんなところで、つぎの一点が目に飛び込んできた。これを描いたのは、著名な清の画家で、華岩(華嵒)(1682~1756)である。三百年にはなるものだろうか。絵には読みやすく、分かりやすい詩が添えられていて、あわせて書き留めておこう。
凹凸石太古、蒙密草尤青
見説含春洞、夜来蛇気腥
ーー人間の足跡などはなく、莽々とした草むらに隠された石穴に春の気配を求めようものなら、そこには夜には活発に走り回る蛇がいるのだ。ーー詩の意味するところはこういうものだろうか。いわゆる文人画の系譜を受け継ぐもので、絵のテーマを蛇に絞っても、自然や季節のことをしっかりと詠み込むことを心がけたものである。
因みにこの絵がささやかな話題を呼んだのは、干支一回り前の2001年に、これがそっくりそのままドミニカで発行された切手の絵柄に用いられたからだ。いわゆる漢語圏の国や地域のシンガポール、香港、モンゴリア、北朝鮮などで蛇の切手を発行してもさほど驚きもないが、それがドミニカだとは意外だった。蛇の切手でさらに興味深い事実を一つ付け加えよう。それより二周り先の1965年に沖縄で発行された切手は、蛇を取り入れたものとして一番古いものだとされている。
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