古典画像は、かてつ絵巻、屏風などのシリーズものが刊行されて普通の研究者や読者に読まれるようになるのが、ほぼ唯一のアクセスの方法だった。そのようなシリーズものへの期待や、そのような刊行がもたらす影響は、いまだ変わったものではない。一方では、そのような出版は明らかにペースが落ち、対してデジタル画像公開は日増しに広がり、印刷刊行がなければ、古典画像へのアクセスは実物しかないという事情は、すこしずつ変わった。
「平家物語」をテーマにした画像群のことを例にしよう。これまでの印刷出版を通して、絵巻、屏風、それから版本の挿絵などの資料がさまざまな形で紹介されている。一方では、ウェブで公開されているデジタル画像に目を移せば、以上のような資料に加えて、さらに奈良絵本、伝存あるいは流失した絵巻の模写という二つのグループの存在が浮かんでくる。これらのデジタル画像へのアクセスは、古典の電子化を精力的に取り掛かっている国会図書館や早稲田大学図書館、国立や地方の美術館の所蔵を集約する「e国宝」や横断検索の「文化遺産オンライン」、それから電子公開を積極的に行う明星大学などのサイトに入り、「平家」「源平」などのキーワードを用いて、図書館の本棚なででは期待できない画像群に簡単にたどり着くことができる。ちなみに、ウィキペディアは関連の画像を慎重に選んで公開していることを付記したい。単純に画像の見やすさ、とりわけその画質、保存と利用などを考えれば、デジタル画像は紙に印刷されたものには勝っても負けていないことは、いまや共通の認識になっていると言えよう。
いうまでもなく、印刷物として出版された古典画像は、たいてい在来の研究の手法を守り、注釈や解説を周到に加えている。このような研究的な対応は、デジタル画像にも応用しなければならない。言い換えれば、デジタル資料をめぐっての学問的なアプローチーーそれはおそらく自然とデジタル的な方法を取るのだろうーーが、明らかに必要なのだ。
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