観光旅行に出かけたわけではないが、劇場に入ってブロードウェイの歌舞劇「ライオンキング」を見てきた。その昔、映画館で見たアニメ映画だったり、車の中で繰り返し聞いた音楽だったりしたものだが、こんどは、正真正銘、本物本家のものを舞台で目のあたりにした。それなりの期待と、懐かしみをもって楽しい時間を過ごした。
舞台劇のいちばんの売りは、人間をほとんど見せないまま、さまざまな動物の姿を舞台に押し出すというものものだった。ストーリらしいストーリがなく、教訓ものといってもまったく他愛のないものだった。そのわりには、大きな舞台がいっぱい、いや舞台から溢れて何回も観客席に踊り子が入ってしまうような、さまざまな動物たちの姿だった。さまざまな造形に奇を競い、見る人の目を楽しませた。とりわけそっけない布の切れをもって河を表現したり、影芝居そっくりの演出だったりなど、ずいぶんと東洋的な舞台要素を取り入れたものだと、感心したものだった。そしてなによりも不思議に思ったのは、ライオン同士の格闘などハイライトになると、なぜか正義のライオンの両手に中国の武術風の刀を握らせたものだった。まったく滑稽なぐらいだった。古風の武器といえば、これしかないないのかと、その想像力の限界を覗いた思いだった。
上演の場所は、オペラや音楽会なら最適の、この町での最大の劇場だった。そして観客たちの多くも、まるでフォーマルなパーティに出るかのように賑やかな正装で身を纏ってのお祭り気分だ。しかも空いている席がまったく見えない、言葉通りの超満員だった。一ヶ月近くも続くという日程にあわせて考えて、驚く集客力と言わざるをえない。この町にはこのような文化行事があまりにも少ないということの裏返しだろうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿