週末に、インターネットを通して一つの研究発表を行った。二年かけての小さなプロジェクトについての報告であるが、時間が止まらずに経過した中、思う通りの成果にはなかなか達成できていない。プロジェクトのタイトルに基礎研究と名乗った通り、あくまでも基礎にかかわるものしか残らなかった。
報告で触れた基礎認識の一つをここに記しておこう。それは、デジタル環境における画像データの継承性である。古典資料における文字も画像も、まずは一通り電子画像として撮影なりスキャンなりの手段を通してデジタルデータに記録する。しかしながら、文字情報に対する電子テキストと、画像情報に対する画像データの間には根本的な違いが存在している。前者の電子テキストには、JIS基準やユニコードなどをもっていち早くスタンダートが樹立されている。しかしながら、画像データには、JPGやPNGなど市民権を獲得した基準が見受けられるようになったにも関わらず、解像度や色彩の記録など、まだまだ発展の余地が残っている。解像度一つをとり上げてみても、利用できれば十分と最高の画質という二つの極端な発想はつねにあった。そして、記録、保存、転送の手段の進歩にともない、数年まえまで最高の画質とされたものでも、いつの間にか利用に十分とさえ考えられるようになり、かなりの機関などでは、じっさいに撮り直しの決断を余儀なくさせられている。とりわけ古典文献の場合、資料の保存などの見地から、とても時間の労力だけでは片付けられない。古典画像の内部に立ち入って追加の情報を作成し、それを対象にデータベースを構築するという該当のプロジェクトは、したがって画像データの継承性というところで最大の難関に直面せざるをえなかった。
ちなみに、発表は質疑応答も含めて、ほぼ秒単位のロスもなくスムーズに進行できた。USTREAM放送で送られてくる会場の様子を、手元の別のパソコンの画面で確認をしながら話を進め、まるで会場に身を置いたような感覚だった。地球半分をまるごと行き帰っているデジタル信号の不思議を噛み締めつつ、とても貴重な経験を得た。
ARC・2016年度成果発表会
2017年2月18日土曜日
デジタル画像の継承性
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