今週に迎えた季節の大きな移り変わりは、節分。暦の上では、すでに春も訪れてきたものだ。一方では、いまだ雪に包まれた厳しい寒さの中から遙か眺めた、いかにも異国らしい日本の風景には、鬼や福を連呼する豆マキよりも、恵方マキのほうがさまざまな意味で話題を攫ったらしい。
恵方という言葉には、個人的にまったく馴染みがない。辞書などを調べれば、同じ言葉は古くからさまざまな漢字に当てられた。なかでも、あるいは「兄方」がいちばん理解しやすいものだろう。干支の読み方から派生されたものと思われ、同じ知識体系の一つとしてまずはしっくり来る。対して、言葉の意味に重きを置いた当て字として、「吉方」(よきかた、よきほうと読まれたか)、「得方」、そして「恵方」など、多彩な用例が報告されている。言語史の勉強をしっかりしていない自分には、古辞書、ひいてはさまざまな古記録データベースにアクセス出来ても、意味ある結論にたどり着く自信がない。ただ「日本国語大辞典」によれば、「恵方」はたしかに近世以後一般的な表記となったと明記していることだけ覚えておきたい。
このように、恵方という言葉を反芻している間に、世の中は、しかしながら巻きずし、コンビニ、ノルマと労働条件など、「恵方」というめでたい言葉は、どうも縁起でもない方向へまるで連想ゲームのように慌ただしく移り変わっている。言葉が変容する極端な一様相として特記すべきだろう。
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