2018年7月14日土曜日

絵巻を教室へ

客員として担当した講義も残り二回となった。教養科目に選んだテーマは絵巻、登録者は120名超え、個人的には未到の記録だ。講義内容として、うちの九回は一点ずつ絵巻を選び、それをトータルに見せるということにした。絵巻を教室に持ち込む。実物、せめてその複製を講壇に広めるに超したことはないが、とても簡単には行かない。そこで次善の方法としてデジタルに頼った。

講義の内容は基本的にパワーポイントに纏めておいた。そこで、画像をスキャンや写真に収めてスライドショーにすることはまず考えられる。それから、たとえば「e国宝」を開いて画像サイズを自由に変えながら見せるのも素晴らしい。ただスライドなら巻物の一部分を切り取る結果となり、美術館サイトだとスクリーンが埋まるまでの待ち時間はもどかしい。そこでたどり着いたのは、画像をローカルに保存しておいて特製のHTMLファイルで繋ぎ、それをブラウザで開く方法である。スクリーンの解像度にあわせて画像を縦に同じサイズに調整し、それらを横に順番に並べていく方法である。このやり方だと、一巻の絵巻、たとえ十数枚の画像でもなんのストレスなく一気にブラウザに読み込め、あとはキーボードを使って左右に自由に移動することができる。目の前に特定の長さの画面が開き、そしてスムーズに左へ右へとスクロール、まさに正統な絵巻鑑賞の再現である。教室のライトを落として大きなスクリーンにそれを投影すれば、本ものの絵巻以上の迫力がある。

取り上げたタイトルは、「音読・日本の絵巻」収録のものを中心に選んだ。全巻の朗読は無理でも、どれか一段について音声を聞かせながら画面を操作した。かなり前に試みた音読を、一度に百人以上の若者に聞かせるという形で利用して、なんとなく報われた思いをした。

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